上海や広東で大胆な住宅購入促進策、“離婚増加”デマの真相は?
不動産市場の低迷を受けて、中国の主要都市で住宅購入制限の緩和が一気に進むことになった。上海市は5月27日、非上海市戸籍住民や多子女家庭の購入条件を緩和し、住宅ローンの利率引き下げや補助金制度の導入などの新施策を発表、市場の活性化と地域経済の底上げを目指す。新政策を受けて“離婚申請”が増加するというデマも流布されたがその真相は?
住宅購入制限の緩和
不動産市場の低迷を受け、中国各都市で住宅購入制限の緩和が進められている。北京では4月30日に13年ぶりの制限緩和を行い、五環以遠の住宅購入を容易にし、杭州市は5月9日、住宅購入制限の全面撤廃に踏み切った。非市民でも住宅を購入できるようにし、購入した場合は杭州戸籍の申請を可能にした。
直近では上海が5月27日に住宅購入促進策を発表したのに続き、広州や深センも頭金比率とローン金利を引き下げた。広州市が28日に発表した「当市(広州市)不動産市場の安定的かつ健全な発展をさらに促進することに関した通知(关于进一步促进我市房地产市场平稳健康发展的通知)」によると、1軒目を購入する際の最低頭金比率を15%にするなど、他都市よりも大胆な措置を講じている。
上海市が3戸目購入を解禁
上海市が5月27日に発表した新施策はすでに翌28日に実施されている。初めて住宅を購入する人の最低頭金比率は従来の30%から20%に、2戸目の住宅購入時の頭金比率は従来の50%から35%にそれぞれ変更された。2人以上いる多子女家庭の住宅需要を想定し、初回の住宅購入者に対する住宅ローン金利は従来の4.1%から3.5%に、2戸目の購入者には4.5%から3.9%にそれぞれ引き下げられている。
注目すべきは、すでに2戸以上の住宅を保有している場合でも1戸の追加購入が許可されたことだ。2011年以降1世帯あたり3戸目を所有することを禁じていた規制措置が大きく緩和された。さらに市内で住宅を買い替える場合、最大3万元(約65万円)の補助金が支給される。
なお、単身者に限り非上海市戸籍住民が外環路以遠の住宅を購入できるとする緩和策が1月31日から施行されていたが、(非上海市戸籍者が)住宅を購入する際の個人所得税・社会保険料の納付期間を従来の5年から3年に短縮したことも注目されている。
離婚申請者増加のデマが流布
最も波紋を呼んでいるのが離婚者に対する購入制限が撤廃されたことだろう。上海市では、この不動産緩和措置が発表されるやいなや離婚届を申請する市民が殺到したとするデマまで飛び交った。
実際には元々混みやすい週末に限られたオンライン申込枠が満員になっただけの現象に過ぎず、上海市の離婚率が高いだけでに誇張された感もある(「搜狐百科」によると上海の離婚率は北京の39%に次ぐ38%で全国2位)。上海デマ払拭プラットフォームは今回の施策による影響とは関係がないとする声明を出している。
“偽装離婚”との因果関係は?
ただ、中国では年々下降が続いていた結婚件数が上昇に転じ、さらに離婚件数が減少したとする統計結果が報じられたばかりだ。そのため、かりに離婚数が実際に増えるデータが出たとしたら、住宅購入制限の緩和との因果関係を指摘する仮説が提示されてもやむを得ないかも知れない。
ちなみに離婚3年以内の住宅購入制限は、夫婦が離婚することで別々に住宅を購入し、制限規制を回避しようとする“偽装離婚”を防止する措置と位置づけられてきた。この制限規制の撤廃は3月27日の時点で北京市が発表していた。今回、上海で施行が始まった新政策が低迷する市場のカンフル剤となるのか熱い視線が注がれている。(編集:耕雲)
参考
More than 50 cities in China ease home purchase curbs to boost real estate recovery - Global Times
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